ぼくらはみんな田舎の子

やたらとでかい月と向き合いながら新東名ー新名神を3時間と少し。月の引力に身を委ねながらスイスイと大阪着。

おそらく9.5割の人たちがHue'sのことを知らない/見たことないであろうシチュエーションで先月半ばに産まれたての新曲をやれて、それがよかった。フラット。まだ0才よ。ギターを弾いていてもボイスメモを聴いても底なしに優しくて"人"やな〜って思える曲。恐らくこれからのライブほとんどでやることになるでしょう。隙あらばセットリストに差し込んでいきます。俺が責任を持って。先月までのHue'sはもうヤケクソになったんか?ってくらいのハイスピードハイカロリーセットリストで最後にI LOVE YOUをやって場を納める ばかりをやってた。それはそれは痛快で気持ちのよろしいものでした。でも今の俺らじゃどこまでいっても湯入れて3分で食えるカップラーメンくらいまでしか到達できない気もした。湯入れて3分で食えるカップラーメンはカップラーメンでもちろん素晴らしいけど。でも久々の"そうじゃない"セットリストはまた別ベクトルで最高でしたね。醤油酒みりん砂糖でじっくりつくる煮物のような奥深さ。まぁどっちの良さもありますわな。みんなも知ってるでしょうよ、カップラーメンと煮物は別ベクトルでうまいってこと。

大阪京都奈良神戸東京以外へライブしにいくと不思議と俺らは身も心も軽くなる。リハ終わっての散歩も気持ちがいい。それはみんなそれぞれ大阪のど田舎出身だから。大都会で終電逃してからの遊び方は色々知ったけど、山川海しかない場での遊び方の方が断然得意。静岡UMBERがある町は完全に守備範囲であり心安らぐ知ってる匂いがしたのでそれに準じた、のびのびとしたライブができた。高速降りてからはみずやんと「この通りは岩手らへんやな。」「ここは泉南の旧26。」と言い合ってたくらいには完全にソレであった。地方に呼ばれてホイホイと行ってしまう理由の大きな一つだと思う。一度コロナで飛ばしてしまったけど、懲りずに呼んでくれてありがとうリクくん。またいい場所を知ることができた。バンドやっていていいこと、全国各地へいけること。

 

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ビッグマフとファズフェイス、それぞれの長所と短所見えた。

脱出、解脱

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5/25

最後に見たのがいつか思い出せないくらいのBUGY CRAXONEが家から1番近いハコ、ファンダンゴにくるので行ってきた。そこは今もドリンク代は¥500で、味の変わっていないギネスもその価格で飲める。ブージーのワンマンを初めてみたのも移転前のそこ。初めてギネスを飲んだのもその時。なんかその頃のことがフワーッと生々しく蘇ってきて心がザワザワした。去年の暮れに出た新譜が妙にしっくりきたわけがちょっとわかったし初めて聴いた時とまったく同じような、ゆきこさんの人としての生き物としての輝きっぷりにやられてギネスを飲みまくる。ライブがいいのはもちろんのことMCが本当に素晴らしかった。あとは転換BGMがずっと良くてこりゃ誰だとシャザムするたびに出てくるジャニスジョップリン。これから掘り下げていこうと思う。

終演後、ファンダンゴ加藤さんに聞いておきたいことがあったので探すもいないので村上さんに声をかけると「事務所やわ!数分で戻ってくると思うしゆっくりしててや〜。」と温かい声をかけていただいた。終演したライブハウスで、ゆっくりしていってやなんか言ってもらえることなどあっていいのか。懐の深さに甘えまくりながらバーカンで再びギネスを注文し入口のベンチ腰掛け暇つぶしの煙草やりながら加藤さんを待った。これからの季節のファンダンゴ前は本当に心地いいのでオススメ。

ファンダンゴは吸音とか防音が他のライブハウスより極端に少なく(やってるのかさえも怪しい)音がぐわんぐわん響きまくってめちゃくちゃ気持ちいい。ニュアンスがまるでダメなバンドはひたすら混沌に響いてしんどいけど、そうじゃないバンドは音たちが壁を蹴飛ばして華麗なターンを描いてるのが目に見えて楽しい。ブージーのリズム隊はたっかい天井の高さ全部を良い響きに操っててたまげた。あそこでしっかりとしたローミッド出すの本当に難しいのにさすがとしか言いようがない。物販でCD買って「素晴らしかったです。好きです。」とまるで告白かのようなこともしてしまった。対バンしたい。

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26

若干の二日酔いを感じながらHue's練の為十三へ。最近の我々はというと全くライブをしてないし進みそうで進まないことが多くモヤモヤとしたままの数ヶ月を過ごしていた。が、ようやくそこから脱却し始めたのでスルスルと物事や気持ちが動き始めました。なによりも新曲たちの良さが今の調子を物語っている。少し前にあまりの体調の悪さ故スタジオを休んで、その時に送られてきた新曲があまりに俺得すぎて次のスタジオが楽しみでしょうがなかった。心の底からスタジオ休んで良かったと思えた。3人で100%つくりきられた、俺の気配が一切しない新曲というのは今までなかったもの。完全に得意分野だったもんで次のスタジオでいとも簡単に150%まで持っていくことに成功したのではやくライブでやりたい。そして録りたい。世の中にゴロンと転ばせたい。1日が終わって家に帰る時に聴いてほしい。他にも、忙しなく目まぐるしく移り変わる日々を曲のテンポや展開に置き換えたようなアッパーチューン、絶対にやばいことが起きるとわかってはいるも足を踏み入れてしまって気が付けば全方位囲まれ終わりな真夜中の樹海ソング、資生堂のCMで流れててもおかしくないんじゃないか?と思うレベルの綺麗な、つるんとしたダンスナンバー等々グッドな新曲たちが控えておりますのでご期待くだされ。大昔からやってるけど未だ音源化できておらずなあの曲もまた着手し始めた。大事にしすぎて3度ほど見失ったのでそろそろ形にしますわ。お待ちを。それらの整地をしていたらあっという間に終わる5時間。常々当たり前でありたいことではありますが、今が全員1番うまく、音がいい。はやくライブしてー。

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27

寝続けてたら1日終わってしまった。この日もファンダンゴに行きたかった。無駄にはしまいと、長年使っているエフェクターBondi Sick asのスイッチがずーっと気に入らなかったのでようやく交換した。"カチッ"とならず信号の切り替わるポイントが非常に曖昧なのでON-OFFにすごく神経を使わなければならなかったのでようやくストレスフリー。これ使ってる人みんなうまいこと踏んでるんでしょうか。

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28

これまた久々なSOCORE FACTORYへ。colormalベースマツヤマさんとは今となれば長い付き合いなので今日みたいなめでたい場でしっかり見ることができてよかった。Hue'sでは絶対にしないようなことばかり曲に詰め込まれてるので見てて面白いしなんせ全員うますぎ〜って感じ。コードワークとプレイが丁寧すぎる。曲への奉仕レベルが異常。気になっていた君島大空はイメージより遥かにハードでプログレッシブな面が多くて燃えた。声の抜け方と馴染みがあんな完璧なのは見たことがない。ギターうますぎるしなんなんじゃありゃ...と。酒を飲むも酔いきれないくらいに2バンドとも完成され尽くしていて隙間はあれど揺るがぬアンサンブル。やられたな〜って気分で帰宅。

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謎のスリーショットと俺の謎ポーズ。クズノさん元気そうでよかった。the PARTYS、colormal、Hue'sのスリーマンいつかやる。

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もう憧れ始めて15年くらい経ってしまう人、チバユウスケが癌にやられThe Birthdayの活動が止まってしまった。発表された時はスタジオにいてみずやんと2人言葉を失った。どれだけ時間がかかってもまた元気にライブしてほしい。何度でも甦り続けたウィルコジョンソンのように。

闇への憧れ

相変わらず暇な時は大阪東京名古屋どこにいてもディスクユニオンに行きなんとなくなCDやレコードを買って気が向いた時にザッと聴くをやってはいるもののどれもグッと来ずを繰り返してたけど今日発売のSyrup16g Les Misé blueを聴いてみたら「うわ〜がっちゃん印100%やん。」となり解かれたような気分になりましたわ。仕事を辞めてからはHELL SEEに頼ることがゼロになりシロップ自体あまり聴いてなかったけどやっぱいい。いろんな人がシロップは実家みたいなものと言ってる意味がやっとわかった気がする。

残響バンドやシロップアートスクールノーベンバーズに入り浸ってたとき、彼らが持ってる闇の部分が俺からすれば光よりも眩しくどうしても手にしてみたかった。羨望。実はそんなに暗く黒くなくて それらが持つ綺麗な部分に惹かれていたと気づいてからはすごく楽になったし己を認めれるようになったな。

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クロスフェード

1日のグローリー、F.PとNo Funとexperienc(e)であるコワダ(濃和田、怖田、壊田、)の企画でフロアライブ。物理的に力強く速いハードコアのバンド、甘美とアンニュイの間を揺蕩うバンドが絶えず溶けて混じって一切退屈することがなかった。あいつの人柄がずっとフロアに滲み出ていて、それも良かったな。限定化してしまうこと、安易に想像がついてしまうことが本当につまらなくてそういう世の中に苛立ちというか悲しみを感じてしまうことがよくあるけど俺の好きな場所や人はそういうことを必ずしない。俺ももちろんそうでありたい。その先にある素晴らしい景色がこの日No Funに詰まっていた。もう聴き始めて何年経ったかわからないピアノガールの焚火の音像に包まれて、本当にこうなるのか!という驚きと感動で胸いっぱいになった。あり得ないことだらけで、地面から壁に伝って響き渡る音に身を委ねていたらあっという間に終わった。我々もこの日はいいライブができたと思う。龍がALMA前に我々メンバーすら知らない曲を突如弾き語り始めて、たまに夢で見る「ステージに上がったら知らない曲が始まってそのままライブが進んでいってしまうが俺は何もできない。」が発生しワケがわからんかった。驚くほどスムーズにALMAに入ることができてそれもなぜ?って感じ。最近はもうそんなことすら楽しめてしまうくらいには気合いや緊張が微塵もなくて「これでいいのか?」って勘繰ってしまうくらいのフラットさ。でもこれでどうやらいいっぽいぞ!と思えてしまうくらい気持ちよーくギターを弾くことができた。みんながテープエコーの操り方を褒めてくれて思わず笑ってしまった。俺よりもテープエコーがギターを弾いてくれるのです。No Funが終わってからは1人で静かに煙草を吸いたくなって、外の喫煙所でぼーっとしてると秋さんが現れた。30分ぐらい2人で話してたと思う。今まで一対一で長時間話したことなくて、不思議な時間の流れ方をしていたな。時が止まったような感覚があった。

 

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こわだがドラムを叩く曲、おれすき。

 

5日のファイヤーループ、Burgundyのレコ発でまたまたNo Funと一緒。夢見たいな日だった。それに尽きる。How are you?のレコ発企画でこの日みたいなメンツで一度組もうと挑戦してみたけど叶わなかった。かなりショックだったのでそれ以来は頭からなくなってしまって、度々各バンドとは対バンできていたからそれなりに嬉しくはあった。みんな色々あるし、勢揃いはできんやろうな〜と半ば諦めていましたが安井くんがまさかやってくれてしまった。未だにただのファンなので彼ら3人が顔を合わせて話しているだけでテキーラ3発決めたくらいの酔いみたいなものにやられてしまいました。一生俺のヒーロー。またまたこんな美しい日、あっていいのか?って感じですよほんとに。みんな離れてからもずっとイケてる音楽をしていて、心の底から良いと思えるのが嬉しい限りである。好きな人たちはみなHue'sや俺個人のことを褒めたり認めたりしてくれるけどそれは当たり前のことなんです。あなたたちの姿を見てきたから、今も楽しくバンドをしているのですよ。

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一生敵わない人

 

7日のパンゲア、きちじょうさんが定期的にやってるALTERNATIVE THRASHING MAD。オルタナティブの定義は難しいが、どうやら我々はそれに属しているみたい。この日の乾杯の際にきちじょうさんが「音楽に依存してしまっている人たちを集めました。」と言っていって全てが腑に落ちた。なぜレア曲化してたのか分からないバースデイを久しぶりにやって、異常に良かった。最近やってる新曲とか今のHue'sとしてのモードと非常に親和性が高いんでしょうきっと。乾杯が終わってからはずっと中井さんとスミダと楽屋で話していた。これもまた不思議な空気と時間の流れ方で、最近はこういうことが多くて面白いしありがたい。中井さんと出会った当初は何を考えてるかわからない謎の大人という印象でしかなかったけど、今になってやっとおもしろおじさんという認識をできるようになった。パンゲアを辞めてからの動きに興味しかないから語弊を恐れず言うならば早く退職してほしい。
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10日のミナホ、ブロンズでのトリで入りが遅かったので昼からスタジオに入っていた。最近のHue'sはやたらとスタジオに入るし曲を作るしライブをする。なにやりも、バンドの調子が良いことの現れである。もうしばらくの間サーキットイベントでフロアをパンパンにできていない。昨日もそうだった。あと何が足りないんやろうかと考えればいくらでも出てくるのでやるしかないのである。ワンマンのチケット買ってくれる人が少なからずいたので良いライブをできたことは確かであり、とりあえず今に至るまでは何も間違ってないはず。履き違えずブレることなく突き進まなければいけない。とにかくデカいとこでやりたい。

 

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音楽の上に立つな

目の前で見てくれているあなた達や1番端っこに腰掛けてiPhoneを触っている方々にまで届くように可能な限り丁寧に、俺たちが出している音がスピーカーから出力されて向こう岸の壁にぶち当たってステージまで返ってくる波をオールで漕ぐようにギターを弾いた。それはそれはもう気持ちのよろしいことで、外に放たれた犬のようになってしまいましたわ。泥くせー生き方してるやついつのまにか居なくなりました?

MCFDNがやってる隣でセッティングするのは非常に贅沢でした。今も夏の間だけやってるというGOを聴けて普通に一ファンとして上がったな。また彼らと四国とかそこじゃなくともどこかへ行きたい。側からみるとリンクする部分が恐らくほとんどないのがまたいいんですわ。それにしても彼らはイケすぎている。愛してる。

前日の練習で龍がおもむろにやり始めた海が待っている。ピアノガールとツーマンをしたときに本気でコピーした記憶を辿って数回合わせてみたら意外とやれたので転換リハでやった。根来真嗣には口頭で伝えただけだがそれとなくやってくれてなんとかなった。ピアノガール、No Funがどれだけ好きか 愛しているか を伝えるのに最良の手段だったと思います。No Funの皆ほぼほぼ最前列で見てくれていておったまげたよ。自分自身やその周りの出来事や人までを全て肯定してくれるような存在って中々無いけど彼らは正にそうで。俺が「マジでライブしたかったんでありがとうございます。」と伝えると「ほんまに思ってる〜!?」とゲラゲラ笑いながら言ってくれたの非常にグッドでしたわ。No Funとはいつか全てを無に帰すようなツーマンをどこかでやりたいな。

ただでさえ忙しないのにコロナ関係で増え続ける注意事項を頭に入れて出演者である我々が一切の不便ないように動き続けてくれていたスタッフの方々には本当に感謝しかないです。みんなNo Fun見たかったやろうに。ああいうイベント、きっと大阪だとできないと思う。京都ならではというか、京都を羨む点の一つでもある。

事あるごとに音楽の上には立てないと思うのですが、ナノボロでのライブを終えてからそのことで頭がいっぱいです。サマソニの騒動とかを踏まえて俺が思ったのはもうそれだけ。音楽の上に立っている人たちは"嫌い"に分類しちゃう。どれだけマナーやモラルがなくとも音楽を立たせている人たちには心惹かれてしまうものがある。ライブを見てしまえばあまりにピュアすぎて見ている自分が炙り出される感覚たまにあるでしょうよ。この辺本当に難しいけどあるがまままでいいよな。龍がいっつも歌ってること。音楽に対しての誠意だけは絶対に忘れてはいけないよ。

隔離明けてから毎日のようにメンバーと会って音を出していた。今日と明日は一旦休養。どんどん鋭くなってきているよ。カイシュウや怖田、No Funの面々、Fireloopの皆にも会った。一気に取り戻したし尋常じゃない速度で物事を動かせている。もう振り解かれることも無いと思う。やっとこれでええわ。

 

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写真 : 瀬藤育

ナノボロのカメラマンが撮ってくれたもの、クイックレポートからお借りしました。モグラさんに許可得たんでオッケーでしょう。

https://borofesta.jp/report/?p=3203

原始神母(原子心母)

2週間ぶりのスタジオ、本来はANIMAでライブの予定だったが延期。急遽決まったナノボロに向けてセトリを決め、何度か通しで練習してあっという間に5時間終了。単純にメンバーと音を出すということが楽しくてしょうがなかった。しばらく感じることのできなかった心地よい疲労感と飲みすぎたコーヒーによる気持ち悪さ。

終わってからダラダラと話していたら仕事終わりのthe seadaysのドラムナラサキケイくんが一服しに寄ってくれた。久々に人と話すことが楽しいのはもちろんのこと、ケイくんまでやってきて、彼は話が常々面白くて、おかげであっという間に今までの世界に戻ってこれたような気分になった。この辺りで俺はこの後の予定が少し億劫になってきて悩む。いつ以来か分からないくらいに1人でライブハウスに遊びに行く予定にしていた。ANIMAがキャンセルになった直後に。想像のできない客層、Hue'sでライブをしたことがない上に普段から行くこともほとんどないライブハウス、しっかりと踏み入れたことのないジャンル。次いつ見れるか分からんし良くなかったなってなる可能性はほぼ0%なのでギターを根來カーに預けて1人向かってみた。

知り合いすら恐らく誰1人いないであろうイベント、貧弱な楽天モバイルの電波はきっと入らない。あまりに心細すぎる。2012年の秋あたりにパンゲアであったピアノガールとuremaのツーマンの日のことを思い出した。あの頃はずっと1人で行ってたしWi-Fiや携帯会社の電波は今ほど普及してなくてパンゲアですら圏外だった俺のギャラクシー。Hue'sのライブに1人で来てくれるお客さんを心底凄いと思いながら狭い階段降りて地下の受付へ。なんとか、ようやく入れたライブハウス。1バンド目がちょうど終わったみたいでバーカウンター以外は閑散としていた。バーカウンターだけは盛り上がっていた。やはり圏外の楽天モバイル。やはり誰1人いない知り合い。この後車を取りに帰るつもりだったので酒に頼ることもできぬまま、コーラ片手に隅っこのソファにありつき煙草吸いながらiPhoneのデータ整理を15分ぐらいしていた。めちゃくちゃ長く感じる15分を過ごしてからそろそろ始まるかなとフロアへ。ずっと流れてるブラックサバス。このライブハウスもフロアは禁煙になってる...とか超ロン毛のベルボトムか超短髪のおじさんしかおらんな...とか思ってたらようやく始まったライブ。この日の2バンド目になる彼らも少し気になっていたのですげえ前で見てみた。転換中は心細いけど待ち望んだライブが始まってくれるとどうにでもなりますな。

マーシャルとジャズコーラスを常に同時出力、ほぼほぼ踏みっぱなしのビッグマフ、アーミングや速弾きをしまくってもチューニングの狂いが一切ないスクワイヤーのストラト、ミドルの塊が音速で飛んでくるベース、時代がひっくり返ったかのようなひたむきなクラウト的ドラム。多分50分ステージで4曲くらいしかしてなかったはず。最後の曲は30分近くあった。ボーカルギターの方が歌っていたのは合計5分に満たなかったんじゃないかな。フジで見たOGRE YOU ASSHOLEを想起させながら俺はずっと爆笑。専属のカメラマンと思われる方は一眼を持つ反対の手には酒。ちょうど半分ずつぐらいの割合で両方をしていた。最前列にはなぜか中腰のベルボトムおじさん。マジで情報量多すぎ。音はデカすぎるし1曲が長すぎる。展開はプログレッシブだがリフやギターとベースがユニゾンになる部分は非常に泥臭くてクール。喰らい続けるとしんどくなるローの成分が一切無かったのは本当にすごい。ローはもはやバンドの誰にも必要ない?そんな感じで割とあっという間に終了。この時点で時刻は21時半。車を取りに帰るのを諦めバーカウンターでハイネケンを頂き煙草吸いながら歯茎の感覚がおかしいことに気づいた。良質な爆音を浴びた時って顎周りなんか変になりません?電波入らんし心細かったけど、1人で来て好きに楽しむのめっちゃいいな〜とか思っちゃいながら腰据えて飲む酒も美味しかった。過ごし方を心得てから?思い出してから?はもうトリのバンドが始まるまでは一瞬で。

待ちに待った目当てのバンド。今月始動したところで音源はなくバンドとしての情報はTwitterに上がっている30秒ほどのライブ映像のみ。恐らくその界隈の強者であろう人たちで結成されているので流石に気になっていた。転換で運び出されてくるギタリストの足元には見たことのないシステムで組まれたボード。秒速で飲み切ってしまったハイネケン。恐らくフロアのほとんどの人が知らないモノが繰り広げられる。ブラックサバスのParanoidがフェードアウトしついに流れるOpening SEは第9地区の冒頭で流れるような古代、的な...。照明は緑。ついに始まってしまった。

サイケデリックプログレッシブが密接な関係であることがよくわかった。なんか聴き馴染みのあるパターンやなと思ったら実はブルースの王道な進行ではあったり。ギタリストはライブの序盤で1弦が切れた。しかしほとんど狂わないチューニング。ペグからぶらぶら伸びている切れた弦をシュッと外しライブは止まることなく進行する。足元に置かれていた緑のアーニーボールの意味とは。ボーカルは57マイクで、恐らくDeath By Audioのエフェクターをマイクスタンドに固定して巧みに操作しながら声じゃない音を発している。いや、声だからこそ出来るプレイではあった。まるでビートルズのモノラルレコードを爆音で鳴らしているかのようなミドルの凝縮っぷりのジャズベース。ライブの中盤、長ーいアンビな空間が繰り広げられた時にはまた彼の足元にもあるDeath by Audio(しかも2個)が踏まれていた。ちなみにギタリストの足元にもDeath by Audioはあった。ほぼほぼおじいちゃんであろうドラマー。虚ろな顔をしながらもドッシリさとライドの気持ちいい使い方がずっと魅力的。なんと最後の曲ではギターの2弦も切れる。6本中2本も弦が切れたギター。しかし曲を誰も知らない。プレイ自体もなんの問題もないように見えてそのまま終わってしまった。事前に足元に用意されていたアーニーボールの緑の意味とは......。アンコールはなく壮絶すぎた50分。長らく気になっていたジャンル、世界、空気をゼロ距離で浴びることができた。最初の方はフロアも乗りこなし方がわからなくて歓声や拍手はなかったが最後の最後にはもう大盛り上がり。あんなもの見たらそうなりますわ。

Hue'sを始めてから早6年ほど?ライブハウスに完全なる純粋な客としていくことがほとんどなくなってしまっていたが色んなことを思い出した。来てくれる方々、本当に凄い。物販が欲しくても中々声かけられなかったり、自分以外は皆友達同士で来ていて転換中の居場所が分からなかったり、ライブハウスって難しいな。でもいざライブが始まってしまえばあり得なくらい楽しい。そのギャップも素晴らしいかもしれない。でももっと過ごしやすくてもいいかな〜とか色んなこと思っちゃったな。とにかく、凄まじい情報量だったのでとりあえずここに記しておく。

 

 

合計4台のメサブキー

ついにコロナにかかり丸1週間ぶっ潰れてしまった。予防はしてるものの、いつかかってもおかしくないよなぁと思っていた矢先のことである。ライブを2本飛ばしてしまったのは本当に悔しいし悲しい。

今年も苗場からあらゆるもの持ち帰ってきて、余韻に浸っていたところに降りかかるコロナの魔の手。そうそう、今年もフジロックに行ってきた。2019年から中止された2020年を除いて結局毎年行ってるフジロック。去年のこと書かずに迎えてしまった2022年。2021年は海外アーティストの出演は無しで、でも何故か3日間しっかりテント泊で行ってた。行く決め手になったのはenvyの出演。The BirthdayNUMBER GIRLとかよりもenvyをフジで、しかもホワイトで見てみたくてしょうがなかった。いざ日割りステージ割が発表されると2日目のホワイトに上で挙げたバンドが集まってて信じられなかった。即座にチケット取って色々をどうにかして行った。この年のフジロックはアルコールの提供なしで23時前には全アクト終了してオールナイトは無し。フジロックとしては異例すぎることばかりでしたが今となってはもうそんなことどうでもよく思えるくらいにひたすらにenvyが凄かった。envy生で見てみたいな〜とうっすら思い始めたのは確か2019年頃。やっと見れることが決まって、しかも思い描いていた以上のロケーション。彼らがリハーサルを始めた瞬間から本編序盤まで大雨。想像以上の重み深み破壊力のトリプルレクチギター(3本のギターと3発のメサブギーの意)、ホワイトステージと森が響きまくっていた。あの1時間弱は未だに理解が追いつかないほどに完璧で絶対的でした。YouTubeに上がっているFarewell to Wordsの映像はもちろんいいですが音が目に見えて迫ってくる立体感が流石に無い。あの曲の開幕を告げるドラムのフィルから最後のアンプ切る瞬間まで意識がぶっ飛びました。今まで生きてきた中で1番短く異質な5分間だった。本当に。破壊的な轟音が印象になりがちなバンドだと思うけど、静である部分のあまりに美しすぎる三重奏のギター。どこまでも、どんな表現でもギターという楽器だけで全て完結させてやりたいと常日頃から思っているけどあんなものを魅せられてしまったら、自分の浅はかさをただ知らされるだけだった。底なしに人間臭いのに超常現象のようなもの とも感じ取れてしまったenvyのライブ。俺がいつも心奪われるのは正反対に位置するものが同時に発生している瞬間。矛盾、曖昧、不確か。それらが完璧に体現されていた。そんなライブを見てしまったせいか、昨年のフジロックの記憶はenvy以外にほとんどない。別ベクトルで喰らったのはレッドマーキーで見たTHE SPELLBOUNDのライブ。レッドマーキーの無機物と有機物が同時に乱反射する気持ちよすぎる響きを知ったのはこの時が初めてで、あと昨今のTHE NOVEMBERSが何故ああなっているのかが目に見えてわかったような気がしたのが凄く良かった。音で空間を埋め尽くすのか、そうじゃないのかの2択しかない?みたいな音の操り方は見ていてとにかく爽快で、envy以外の存在に心動かなくなりかけていたヤバい精神状態をぶっ壊してくれた。またライブ見たい。アルバム結構良いです。夜更け前に聴くのがいいかも。あとは、3日目のヘッドライナー裏はピラミッドガーデンというフジロックにおいて最もチルに特化した空間で焚き火眺めながらJulia Shortreedのライブ浴びて締めるのが気持ち良かった。今まで生きてきた中で1番有意義な「無」の時間だったと思う。

 

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ロー削ってハイ上げろ

車の中で目が覚めてもまだベロベロ。サービスエリアで半泣きになりながらカツ丼食ってポカリガブ飲みしてもう一度無理やり寝る。次起きたらもう根來真嗣の家の前。流れるようにごとくが機材を下ろし、龍は玄関口の水道で頭を洗って、みずやんは酷く低血糖で屍になっていた。「丸一日ケバブしか...食ってへんからなぁ...。」とマジで限界の声で言ってたけどそんなにシビアな身体なことが見かけによらずでちょっと笑ってしまった。記憶の回収をみんなで適当にしてから根來宅を出発して各々を送り最後レンタカーを返してようやく7月15日終了。もう20時前。

2ステージ自体はなんの問題もなかったけど搬入搬出だけが本当に地獄で、それさえなければもう毎回2ステでいいよ!って思えてしまったな。東京に着いてからはもうずっと雨が降りしきっていて、履いてた革靴もベルボトムの裾も浸水しきって雨で重くなって最悪でした。が、marbleでのライブを終えてからはもうそのダルさは吹っ飛びましたわ。最近はもうステージの上で自由をやっていることが楽しくてしょうがないのであっという間に30分が終わるし壊せるし守れることができる。これだけを本当にずっとやっていたい。

マーシャルのスピーカーを交換したことが完全に吉と出て、出したい音と出すべき音のピントが合う部分がはっきりわかったので久々にシールドも見直そうと思い今回のライブからBELDEBの9778にしてみた。しばらくMOGAMIの2524をなんのこだわりもなく使ってたけどBELDENに戻してみてからMOGAMIは空気の丸い部分がそもそもないことに気づいた。多分エアー感と言われるもの。油断するとすぐソリッドになっちゃう。今回9778と一緒に買った9395は2524に質感は近かった。あとオヤイデのForce77はどう足掻いても音を綺麗に纏めてくれるあまりに良くできたシールドすぎてハマらなかった。オヤイデ、リッチすぎる。ギターってフルレンジ出す必要ないと思うしな。いや、ギターだけに関わらずバンドそのものにも言えることかもしれないな...。9778のエアー感と速度がとっても良かったのでまたBELDEN片っ端から試していってみようかな。8412また使ってみたいけどそれよりも8422が気になる。2芯は硬いし取り回しが楽ではないので苦手ですが8422はなんとグレー1色のみ。しかも色味もとてもいいので気になりすぎる。寝て起きたらポチろうと思う。音が見えたらもう探せばいいだけなので楽しい作業。綺麗すぎる音は退屈になる時があると言われること多いんですが、俺はもう突き抜けきったクリアな爆音を目指すことにしたんで、なんとかしてみんな黙らそうと思う。

話がかなり逸れましたが、そういうことばっかり考えてたらmarbleもTHREEもしっかりやれた。ライブの内容に関してはもうそこにいた人たちが知っていたらいいでしょう。何かを感じてくれたのであればどうか、近しい音楽好きの方へHue'sのことをお伝えください。より多くの人の元へ届いてほしい。今は分からなくても何かをキッカケに扉が開くことはよくあるので。よろしく頼みます。ライブ以外に関しては、marbleではFATE BOXと久々にちゃんとやれたことがまず事実として嬉しかったし、見てもらえて良かった。彼らのライブは想像以上に包容力のステータスが上がってたように見えた。やっぱカズはギターうますぎ。THREEはルリコが遊びに来てくれてついでにiPhoneで写真撮ってくれたし朝まで遊んでくれた。やつのポテンシャルの高さは未だかつて見たことないレベル。気がつけば帰ってたし。まさか会えるとは思ってもいなかった面々も複数。流石龍ノ平くんって感じ。やらなきゃいけないこと、たくさんあるなー!やらねばなー!と皆と酒を飲んでいたのに、いつのまにか意識は飛んでおり目を覚ますと昼前の刈谷サービスエリアにいた。二日酔いと戦うことぐらいしか俺には出来なかった。

 

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写真 : 稲垣ルリコ

 

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東京 新宿の建物はどれもスケールが大きすぎて気が狂いそうになる。

ずっと業火の中

高校生活における全てを捧げたバンドを共にやっていた友達がHue'sのライブを見に来てくれた。それがこんなにも嬉しいことだとは思ってもいなくて、打ち上げが終わってからも2時間ほど話していた。そのバンドでは大きな何かを成し遂げたわけじゃないけど俺にとって本当にバカでかい存在だった。それに今も手を取って引っ張られているような感覚になった。

旧友や、普段バンドとは関係のないところで接している人たちにライブを見てもらうことが照れ臭いような、どこか不安な気持ちが少し前まではあったけどHz-adoptをリリースしてからはもう誰彼構わず見てほしいと胸を張って思えるようになってきた。そういう心持ちでいられるくらい最近のHue'sはメンバー全員実感があるほどに調子が良いし緊張と緩和のバランスをうまくコントロールできるようになってきて毎ライブ楽しくてしょうがない。何故うまいこといってるかのワケも大体わかるから尚更良い。ライブにおけるあれこれを意図的にポンポン進めることができるし、思わぬアゲポイントとかを面白がりながら演奏することができている。曲の持つ空気そのものに身を委ねるのが気持ちいいのはもちろんのこと、それをあえて壊してみたり、ぐいぐい引っ張ってみたり。過去の曲を今の自分達で違和感がないようプレイする為に手段や目的を変えてみたりするのも、過去の自分と向き合ってるような気がして良い。今まで作ってきた曲たちにははっきりとした自我があって、なんでも思い出させてくれるし安っぽい言い方になっちゃうけど救われてる。最近で言うとHateがそうで、岡山で久しぶりにやった時に目が覚める感覚があった。かつてのHateとは違う音像ではあるがやってる時の気持ちと壊し方は全く変わってない。nanoの時に頂いたアンコールで何をやるか悩んでる俺たちを見て「Hateやろ!Hate!Hate!!」とフロアから叫んできたカイシュウの一声でやったHate、それはもう壊しに壊し尽くして爽快それ以外の何者でもなかった。カイシュウはその辺のセンスも長けていてマジで最高。自分でそのことを「センス芸でやってるからな〜。」と言っていた。そのスタンスもかなり最高。Hue'sというバンド、それにまつわること全てさえもかなりいい感じ。Hz-adoptリリースパーティーのPangeaから今日のことまで書きたいな書かなくちゃなと思いながら1ヶ月以上も経ってしまった。まだ割と覚えているので鮮度落ちる前になんと書く。今日はもう書かざるを得ないくらいに清々しい二日酔いから始まって家出てライブして旧友と乾杯して家に着くまでかなりのキマりっぷりで終えれたのでババっと書いちゃいました。誤字がないか、読みづらくないかのチェックももいいや。もっとライブしたいし空気(大気)を手中に収めて自由自在にコントロールしたい。音は空気を伝ってフロアにいる人のもとへ飛んでいってるので、最後まで責任を持って提供していきたい。

 

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東京にいるグッドカメラマンルリコが撮ってくれたやつ

 

 

Hz-adoptの歴史、セルフライナーノーツ

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各曲の完成に至るまでの経緯等を。()の中は個人的な印象、仮タイトルのようなもの。

 

1. Luka(速い)

この曲はドラムがまだ最初期メンバーである鵜野の頃から存在する。2016年12月3日にレッドホットというスタジオの細長い部屋で作った。龍が適当に弾き始めたリフがイントロとアウトロにあたるリフで、皆でジャカジャカと合わせながら。その最中に俺が突如としてハイネケンを3本一気飲みに近い勢いで飲み干し龍以外にブチギレる珍事件を乗り越えなんとか今の形にある。初めてライブでやったのは戦国大統領かな。あまりに短いし速くてワケがわからん今後絶対やらんくなるやろうな...と思ってけど未だにやってる。なんならアルバムの一曲目を飾ってる。ドラムスもりかずになってからもバンバンやってたし2番まで追加したり導入イントロをやってみたりしていた。が、よくよく考えてみるとLukaは速い短い音がデカいが売りだということをすっかり忘れていたのでもう何もかも戻した。ギターに関しては本当に5年前とやってることがほとんど変わっていない。みずやんのベースは主にサビがよりストレートに変わったけどそれは速い短い音がデカいに準じた結果であり純度を上げることに成功したのでオッケー。イントロからAメロに入る瞬間まで鬼のダウンピッキングで駆け抜けれれば全て良し。今回の音源はBPM190前後で録りましたがライブだと220を突破することもあります。こんなにも突き抜けていて清々しい曲、初期衝動と根拠ない自信の塊だったハタチ過ぎじゃないと作れんわな。

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酒を突然飲みまくり半泣きでキレた後トイレで吐きまくり潰れた俺をなんとか我が車まで連れて行ってくれた上に、生き返るまで寺田町の安安で適当に飲みながら待っていてくれたメンバー。目を覚ましたら助手席に鵜野、真ん中の列にみずやんと龍。後部座席に横たわる俺の横にはポカリ。この瞬間Hue'sはずっと続けようと思ったな。てか車で来てるのに飲みまくるなよな俺。

 

2. Youth(荒野をハーレーでぶっ飛ばす)

この曲もLukaと同様に鵜野時代からでありレッドホットで作った。2016年11月28日(俺骨折明け)のスタジオで龍がガレージバンドを開いたiPhoneを渡してきて「これどない?旭的にアリやったらやろ。」とデモを聴かしてくれたのを今も覚えてる。Youthが誕生するまでは小難しくて音数の多い曲ばかりなHue'sだったがそれとは打って変わってシンプルなデモを聴いてたまげた。テンポとノリはミッシェルで言うとGT400ぐらいだったもののメロディとコードと展開の仕方はデモの時点で完成されており、その日のスタジオで今の形まで持っていけたのである。ラスサビ前のアルペジオとかアウトロのソロが何故そんな一瞬で思い浮かんだのか、謎でしかない。初めてライブでやったのは同年12月8日のお客さんが3人ぐらいしかいないロックタウン。それ以降はほぼ毎回と言っていいほどやっていた。全員が気に入った理由は「マジで簡単!」だけだった気がする...。みんな気づいてると思うので書いちゃいますが元ネタはSonic YouthのIncinerateであり、タイトルはSonic Youthの"Youth"から取ってます。ちょうどこの頃俺と龍がたまたま同じタイミングでSonic Youth聴き始めて。確か。あとは北欧インディーを漁ってたっけ。「Radio Deptとかいいよな〜あと最近でいうとTape WaveとかDay Waveも!」と不思議と全く同じ音楽ばかり聴く瞬間が稀にあった。ちなみに今もまたその感じきてる。

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Youth制作時スタジオでのみずやん。わっか。あとSVB懐かし。

 

3. S.O.R.A(万華鏡、サイケ)

もりかずの脱退後、the McFaddinのドラム安東と最初のスタジオになる2020年6月25日に龍が持ってきた曲。5〜6時間予約を取っていたがこの1曲だけを合わせ続けたので気が狂いそうでした。既存曲から何個か叩けるようにしといて!とも安東には伝えてなかったしそもそも龍はやるつもりもなかったように見えた。全曲ボツにして新曲だけでやっていくんかな...と本気で不安だったな。終わりを察したよ。歌とコードとノリを聴いて安東が敷いたモータウンなビートはHue'sの3人誰も守備範囲じゃないし曲調も今までにない感じだったので本当に苦労した。でもこのイントロのリフも最初から出てはいたな。当時の俺は脳に浮かぶバンドや風景が一切なく、「本当にこれでいいのか?」と疑心暗鬼のまま進めていってて気が遠くなる一方でした。でもそのスタジオの後中崎町の路上で飲みながら龍に「旭はテープエコーとSGを買うんや。みずやんは山篭れ。」と一喝され気がつけば俺は本当にその2つを買ってたしみずやんは山に篭った。その成果はマジであってその後俺は「この曲はビートルズ的なサイケと踊ってばかりの国とかオウガのもつ浮遊感なやつや。」と自分の中で着地に成功。裏拍のノリ感としっかりうねりを生まないと退屈になるの、安東発端じゃないとこうならなかったことでしょう。彼の功績はデカい。

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色味のバランス。

 

4. 雨(山下達郎フジイケンジと馬渕啓加入)

安東での2回目のスタジオで、空と同年7月7日。この日から俺はSGを持ち込んでやっていた。空とは打って変わってえらい小洒落た感じ。またもや守備範囲外。「これはもうマジで龍はYouthとかBirthdayは二度とやらんつもりやな。」と一度腹を括ったタイミングでもあります。スタジオでの作曲あるあるだと思いますが、展開に困れば「次は〜んじゃギターソロいって〜」と必ず誰かが口にする。そして逆らえないギタリスト。雨に至っては「あえてめちゃくちゃ弾きまくってみるとかいいんちゃう!?」と安東が閃いて乗っかってみたら今の今まできちゃいました。AとBメロのギター、当初はかなりアヴァンギャルドでヘンテコな当て方してたけどリズム隊に徹するアプローチに変えて着地。コードネームで言うとメジャーセブンスの応酬だと思う。多分...。久しぶりに龍とギターソロを弾き合う曲なので今となれば楽しいです。あからさまにギターが歌いまくる曲、この世から随分と減ってしまったので弾ける限り弾いてやった。安東の功績はマジでデカい。

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5. Flowers(優しいオレンジの光でピントは合ってない。フィルム)

この曲のできた経緯やスタジオの様子が一切記録されておらず、記憶にもないのであります。それぐらい一瞬でできたはず。初めてライブでやったのはFireloopで、我々が大変お世話になっている安井くんとのりちゃんの間にできた新しい生命におめでとうの気持ちでやった。それは覚えてる。コード数があまりに多いのでもうルートすら拾わずにギターは当てました。ものすごく久々に感覚だけで一筆書きできた曲なので結構気に入ってます。確かプリプロの時は1サビ終わりにCメロのようなものが存在して2Aやって終わりという形でしたがレコーディングの時に思い切って1サビまでで終わる超省エネシンプルスタイルへ。本当にいいと思う。Hue's初?の3拍子の曲ですが言われるまで気づきませんでした。俺は8で取ってる。何言ってんの?と思うことでしょう。

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ミニマルであればあるほど良い。

 

6. Shangri-la(ホリエとアベ)

レコーディング最終クールにギリギリ滑り込むことに成功したHz-adoptのA面的ソング。あまりに曲が出来ないゾーンから抜け出せぬまま迫り来るレコーディング。とりあえず次のスタジオ無しにしてキャンプするべ!と提案してみんなで飲んだりダラダラしたり花火打ち合ったりした。んで曲作る上でどういうテンポ感で、ノリで進めていくかと話し合ってる中で龍から出てきた〇〇的なビートそろそろ使ってみたいということで今の形になりました。珍しく俺もコードとか展開とか考えたはず。そしたらたまたま龍も俺もキーはAでサビの進行は同じだった。ここまでくればもう簡単でズバズバー!と出来上がりました。ラスサビ前のギター後バンドインの間奏で突然Aから下降していくパターンが生まれた時はよくわからなかった。これは龍考案。今となってはラスサビまでのヤマ作れてるなーと思える。単音とかアルペジオでアンニュイに攻めるのも好きですが1番の得意技としては"ローコードで歯切れ良くガツガツカッティングする"なのでもう最初からそうしてやりました。シンプルイズベスト!

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ゴリっとジャキっとバリっと。

 

7. ベランダ(遠くの一本の煙、草の匂い)

この曲も原型こそは鵜野時代から存在し、こねくり回し続けきた。2017年6月2日のスタジオで原型が生まれた。この日のスタジオの空気とか気だるさは昨日のことのように覚えていて、6月1日は西院 GATTACAでライブだった。ライブと打ち上げを終えた0時過ぎ、まだまだ飲み足りなかった我々はピアノガール秋さん(現No Fun内田秋)に連絡すると家で飲もうと言ってくれたのでHue's4人と安井くんと豪くんヤマトくんで秋さんの前の家へ向かうことにした。爆音でピアノガール 軍団を再生し熱唱しながら。そこから確か明け方まで飲んで、ノンアルコールで正気をギリギリ保ってくれていたもりかずの運転で大阪に帰った。そしてなぜかその足でスタジオに入り出来たのがベランダである。いつものスタジオについて、機材下ろして帰るか〜なところにもりかずの「スタジオ入るか〜。」の狂気。今も忘れない。凄まじい二日酔いと初夏の蒸し暑さ、吸いたくないけど吸う煙草。帰ってなにしよとりあえず歯磨いて風呂入りたいな〜。これからもみんなベランダに頼ってね。

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8. umi e umi e (umi e umi e)

ピアノガールとPangeaでツーマン(2019年3月8日)やった時に"海が待っている"のカバーをやりまして、それが原型になって生まれた曲。umi e umi eというタイトルは元々秋さんがソロで活動していた時の名義。今作のアレンジに着地するまではもう丸っきり海が待っているすぎてボツになる可能性も大いにあった。でも他の曲とは比にならないくらい龍の意思が強くて、安東になってから新曲以外で最初にやり出したのもこの曲。とにかくスケールがデカく硬派なイメージがあって、それをそのまま形になんとかできてよかった。俺の刻みから始まって龍の歌が乗り、Bメロでバンドイン。Hue'sではやってこなかったパターンだが往年のロックバンドたちは結構やってきている王道なものだと思う。一番最初にライブでやったのは2019年6月14日のnano。残っているボイスメモを聴いてもどんな空気だったか一切思い出せないけど、1番サビ終わりまでやったところで全員間違えすぎて最初からやり直すという小っ恥ずかしい事件が起きてた。それくらい全員飲み込むのが難しい曲だった。これは難儀するぞーと思っていた矢先に同年7月14日に名村造船所跡地であったPangeaのイベント 新世界でやったumi e umi eがかなり気持ち良くてそこからよくやるように。あの瓦礫に囲まれた壁の無い、空間と空間に境目がないのが素晴らしかった。ああいうとこでまた響かせたい。安東を挟まなかったら今みたいな真っ直ぐな曲にならなかったと思う。彼の功績は誰もが想像しているより遥かに大きい。

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熱は籠り冷房もないし、音は回りまくる最高の場所。のりちゃんの写真も良い。また撮ってくれ。

 

9. Poolside(胸きゅんソング)

キャンプの賜物。 初めてライブでやったのは2021年6月12日のFireloopかな。スーパー作曲ゾーンに全員入ってたのでそこまで悩まなかった。というか悩んでる暇もないくらい納期が近かった...。あと根來真嗣と初めてゼロから作った記念すべき一曲。サビのリズムパターンは彼じゃなければ出なかったことでしょう。最初の最初はもう恥ずかしくなるくらいポップな出来上がりで大丈夫か?って感じでしたがなんとかHue'sらしくアンニュイで奥ゆかしい空気出せました。ちなみに、アルバムの最後を飾る可能性があった。イメージではサマーウォーズのエンディングとかで流れてても違和感がなく(サマーウォーズ見たことないけど)、それくらいフレッシュで顔を赤くしちゃうような。やり出した時は跳ねを掴むのが難しかったけどHue's得意なミドルでジワッと滲む感じか!と認識できてからはもうスルスルと。

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Poolsideを作っていた時に関する写真ない、と思いきやあった。2021年6月8日。FATE BOXカズの実家に行くという謎イベントが発生して深夜車を走らせて送られてきた住所に向かった。それはそれはもう尾崎が比にならないくらいの田舎であからさまに空気が綺麗で聴こえてくるのはせせらぎと鈴虫の音。彼の育った小さな小さな村を30分ほど歩いて紹介してくれた。カズがカズである意味がすごく見えてきたし何故か俺の脳もかなり開いた。それ、かなりPoolsideに反映させれたしそれ以外の曲の空気にもなってる。自然の音が1番のBGMだということすっかり忘れてたんよな。カズまじでさんきゅー。で、写真の黒猫は彼の実家にいたやつ。

 

10. Hallelujah(祈り、ステンドグラス)

今の形になるまで1番時間がかかったし本当に苦しんだ曲。残っている記録では最初に合わせたのが2019年3月13日。ビートが跳ねてる。謎すぎ。当初はアウトロのアルペジオがイントロにあったし、キーはCだった(今作はA)。しかももっとリバーブが深くてTHE NOVEMBERS(paraphilia、Misstopia期)のやるシューゲイザーに近い形だったはず。2年かかっても完全に着地できてなかったのであえて今作に入れると決めた。そうすればやるしかなくなるので。とはいえ色々試してみるがしっくりこない。手始めに、キーがCだとあまりに高すぎて(Youthのサビより高かった)歌えないのでAまで下げてみた。歌えはするけどイメージしていた大聖堂で響いてるような讃美歌にはならない。安東とも試行錯誤しながら、あれこれやってみるものの大きく違うわけではないがこれだ!とならず。そこで俺が引っ張ってきたのはLed Zeppelinが天国への階段とかThe Rain Songでやってるような、ギターと歌だけでしばらくいってみる手法。コードをしっかりなぞりつつ、わかりやすいローコードにならぬよう組み替えてやってみた。それが想像以上にハマった。そうか、讃美歌っていうのはベースとドラムという概念なかったな。伴奏と歌だけあれば十分だった。3年ほどの時間をかけてようやく着地。レコーディング時にはさらに大聖堂っぽさを出すためにコーラスを5つぐらい重ねたけどそれすら要らなくなった。バンドという形で讃美を表現したらこうなりました。今こんなことやってるやつ誰もいないことでしょう。素朴で最小限の祈り。

あなたの思う大聖堂を思い描いてください

 

11. ALMA(隕石衝突、ビックバン)

アルバムの最後を飾るALMA。安東と共に作った空、雨に次ぐ3曲目。最初の記録は2020年8月18日とある。イントロには龍の複雑なアルペジオがあったけど今は漢のローコードD1発となりました。あとこれもHallelujahに続いて跳ねてるわ。どうして作曲初期段階は跳ねがちなのか。コード進行や展開はHue'sの名曲となるものから引っ張ってきて「これは名曲にするぞ!」と作ってる段階から龍が言い切ってた。とはいえ俺はギターというものを見失いまくっていたので両手が動かずにいた。e-bowを使ってみたりBig skyに頼ってみたり、色んな手を使ってみるも進まない。そこに突破口となったのはDeath Cab For Cuite。何故そこに行き着けたかはわからないが、Narrow Stairsの1曲目であるBixby Canyon Bridgeな要素をふんだんに取り入れました。しばらくの間それでかなり良い線まで持っていけたのですが120%にはならなかった。なんとかそこまでいけたのはフジロックで見たenvyがあったから。俺個人としてはそれがあまりにも大きすぎる。龍本人も意識していたし色んな人にバレていたバンプのとある1曲を奇跡的に俺が知らないままいれてUSインディーとポストハードコアを融合させたら今の形になれました。毎ライブやるくらいお気に入りです。

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