Hz-adoptの歴史、セルフライナーノーツ

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各曲の完成に至るまでの経緯等を。()の中は個人的な印象、仮タイトルのようなもの。

 

1. Luka(速い)

この曲はドラムがまだ最初期メンバーである鵜野の頃から存在する。2016年12月3日にレッドホットというスタジオの細長い部屋で作った。龍が適当に弾き始めたリフがイントロとアウトロにあたるリフで、皆でジャカジャカと合わせながら。その最中に俺が突如としてハイネケンを3本一気飲みに近い勢いで飲み干し龍以外にブチギレる珍事件を乗り越えなんとか今の形にある。初めてライブでやったのは戦国大統領かな。あまりに短いし速くてワケがわからん今後絶対やらんくなるやろうな...と思ってけど未だにやってる。なんならアルバムの一曲目を飾ってる。ドラムスもりかずになってからもバンバンやってたし2番まで追加したり導入イントロをやってみたりしていた。が、よくよく考えてみるとLukaは速い短い音がデカいが売りだということをすっかり忘れていたのでもう何もかも戻した。ギターに関しては本当に5年前とやってることがほとんど変わっていない。みずやんのベースは主にサビがよりストレートに変わったけどそれは速い短い音がデカいに準じた結果であり純度を上げることに成功したのでオッケー。イントロからAメロに入る瞬間まで鬼のダウンピッキングで駆け抜けれれば全て良し。今回の音源はBPM190前後で録りましたがライブだと220を突破することもあります。こんなにも突き抜けていて清々しい曲、初期衝動と根拠ない自信の塊だったハタチ過ぎじゃないと作れんわな。

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酒を突然飲みまくり半泣きでキレた後トイレで吐きまくり潰れた俺をなんとか我が車まで連れて行ってくれた上に、生き返るまで寺田町の安安で適当に飲みながら待っていてくれたメンバー。目を覚ましたら助手席に鵜野、真ん中の列にみずやんと龍。後部座席に横たわる俺の横にはポカリ。この瞬間Hue'sはずっと続けようと思ったな。てか車で来てるのに飲みまくるなよな俺。

 

2. Youth(荒野をハーレーでぶっ飛ばす)

この曲もLukaと同様に鵜野時代からでありレッドホットで作った。2016年11月28日(俺骨折明け)のスタジオで龍がガレージバンドを開いたiPhoneを渡してきて「これどない?旭的にアリやったらやろ。」とデモを聴かしてくれたのを今も覚えてる。Youthが誕生するまでは小難しくて音数の多い曲ばかりなHue'sだったがそれとは打って変わってシンプルなデモを聴いてたまげた。テンポとノリはミッシェルで言うとGT400ぐらいだったもののメロディとコードと展開の仕方はデモの時点で完成されており、その日のスタジオで今の形まで持っていけたのである。ラスサビ前のアルペジオとかアウトロのソロが何故そんな一瞬で思い浮かんだのか、謎でしかない。初めてライブでやったのは同年12月8日のお客さんが3人ぐらいしかいないロックタウン。それ以降はほぼ毎回と言っていいほどやっていた。全員が気に入った理由は「マジで簡単!」だけだった気がする...。みんな気づいてると思うので書いちゃいますが元ネタはSonic YouthのIncinerateであり、タイトルはSonic Youthの"Youth"から取ってます。ちょうどこの頃俺と龍がたまたま同じタイミングでSonic Youth聴き始めて。確か。あとは北欧インディーを漁ってたっけ。「Radio Deptとかいいよな〜あと最近でいうとTape WaveとかDay Waveも!」と不思議と全く同じ音楽ばかり聴く瞬間が稀にあった。ちなみに今もまたその感じきてる。

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Youth制作時スタジオでのみずやん。わっか。あとSVB懐かし。

 

3. S.O.R.A(万華鏡、サイケ)

もりかずの脱退後、the McFaddinのドラム安東と最初のスタジオになる2020年6月25日に龍が持ってきた曲。5〜6時間予約を取っていたがこの1曲だけを合わせ続けたので気が狂いそうでした。既存曲から何個か叩けるようにしといて!とも安東には伝えてなかったしそもそも龍はやるつもりもなかったように見えた。全曲ボツにして新曲だけでやっていくんかな...と本気で不安だったな。終わりを察したよ。歌とコードとノリを聴いて安東が敷いたモータウンなビートはHue'sの3人誰も守備範囲じゃないし曲調も今までにない感じだったので本当に苦労した。でもこのイントロのリフも最初から出てはいたな。当時の俺は脳に浮かぶバンドや風景が一切なく、「本当にこれでいいのか?」と疑心暗鬼のまま進めていってて気が遠くなる一方でした。でもそのスタジオの後中崎町の路上で飲みながら龍に「旭はテープエコーとSGを買うんや。みずやんは山篭れ。」と一喝され気がつけば俺は本当にその2つを買ってたしみずやんは山に篭った。その成果はマジであってその後俺は「この曲はビートルズ的なサイケと踊ってばかりの国とかオウガのもつ浮遊感なやつや。」と自分の中で着地に成功。裏拍のノリ感としっかりうねりを生まないと退屈になるの、安東発端じゃないとこうならなかったことでしょう。彼の功績はデカい。

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色味のバランス。

 

4. 雨(山下達郎フジイケンジと馬渕啓加入)

安東での2回目のスタジオで、空と同年7月7日。この日から俺はSGを持ち込んでやっていた。空とは打って変わってえらい小洒落た感じ。またもや守備範囲外。「これはもうマジで龍はYouthとかBirthdayは二度とやらんつもりやな。」と一度腹を括ったタイミングでもあります。スタジオでの作曲あるあるだと思いますが、展開に困れば「次は〜んじゃギターソロいって〜」と必ず誰かが口にする。そして逆らえないギタリスト。雨に至っては「あえてめちゃくちゃ弾きまくってみるとかいいんちゃう!?」と安東が閃いて乗っかってみたら今の今まできちゃいました。AとBメロのギター、当初はかなりアヴァンギャルドでヘンテコな当て方してたけどリズム隊に徹するアプローチに変えて着地。コードネームで言うとメジャーセブンスの応酬だと思う。多分...。久しぶりに龍とギターソロを弾き合う曲なので今となれば楽しいです。あからさまにギターが歌いまくる曲、この世から随分と減ってしまったので弾ける限り弾いてやった。安東の功績はマジでデカい。

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5. Flowers(優しいオレンジの光でピントは合ってない。フィルム)

この曲のできた経緯やスタジオの様子が一切記録されておらず、記憶にもないのであります。それぐらい一瞬でできたはず。初めてライブでやったのはFireloopで、我々が大変お世話になっている安井くんとのりちゃんの間にできた新しい生命におめでとうの気持ちでやった。それは覚えてる。コード数があまりに多いのでもうルートすら拾わずにギターは当てました。ものすごく久々に感覚だけで一筆書きできた曲なので結構気に入ってます。確かプリプロの時は1サビ終わりにCメロのようなものが存在して2Aやって終わりという形でしたがレコーディングの時に思い切って1サビまでで終わる超省エネシンプルスタイルへ。本当にいいと思う。Hue's初?の3拍子の曲ですが言われるまで気づきませんでした。俺は8で取ってる。何言ってんの?と思うことでしょう。

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ミニマルであればあるほど良い。

 

6. Shangri-la(ホリエとアベ)

レコーディング最終クールにギリギリ滑り込むことに成功したHz-adoptのA面的ソング。あまりに曲が出来ないゾーンから抜け出せぬまま迫り来るレコーディング。とりあえず次のスタジオ無しにしてキャンプするべ!と提案してみんなで飲んだりダラダラしたり花火打ち合ったりした。んで曲作る上でどういうテンポ感で、ノリで進めていくかと話し合ってる中で龍から出てきた〇〇的なビートそろそろ使ってみたいということで今の形になりました。珍しく俺もコードとか展開とか考えたはず。そしたらたまたま龍も俺もキーはAでサビの進行は同じだった。ここまでくればもう簡単でズバズバー!と出来上がりました。ラスサビ前のギター後バンドインの間奏で突然Aから下降していくパターンが生まれた時はよくわからなかった。これは龍考案。今となってはラスサビまでのヤマ作れてるなーと思える。単音とかアルペジオでアンニュイに攻めるのも好きですが1番の得意技としては"ローコードで歯切れ良くガツガツカッティングする"なのでもう最初からそうしてやりました。シンプルイズベスト!

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ゴリっとジャキっとバリっと。

 

7. ベランダ(遠くの一本の煙、草の匂い)

この曲も原型こそは鵜野時代から存在し、こねくり回し続けきた。2017年6月2日のスタジオで原型が生まれた。この日のスタジオの空気とか気だるさは昨日のことのように覚えていて、6月1日は西院 GATTACAでライブだった。ライブと打ち上げを終えた0時過ぎ、まだまだ飲み足りなかった我々はピアノガール秋さん(現No Fun内田秋)に連絡すると家で飲もうと言ってくれたのでHue's4人と安井くんと豪くんヤマトくんで秋さんの前の家へ向かうことにした。爆音でピアノガール 軍団を再生し熱唱しながら。そこから確か明け方まで飲んで、ノンアルコールで正気をギリギリ保ってくれていたもりかずの運転で大阪に帰った。そしてなぜかその足でスタジオに入り出来たのがベランダである。いつものスタジオについて、機材下ろして帰るか〜なところにもりかずの「スタジオ入るか〜。」の狂気。今も忘れない。凄まじい二日酔いと初夏の蒸し暑さ、吸いたくないけど吸う煙草。帰ってなにしよとりあえず歯磨いて風呂入りたいな〜。これからもみんなベランダに頼ってね。

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8. umi e umi e (umi e umi e)

ピアノガールとPangeaでツーマン(2019年3月8日)やった時に"海が待っている"のカバーをやりまして、それが原型になって生まれた曲。umi e umi eというタイトルは元々秋さんがソロで活動していた時の名義。今作のアレンジに着地するまではもう丸っきり海が待っているすぎてボツになる可能性も大いにあった。でも他の曲とは比にならないくらい龍の意思が強くて、安東になってから新曲以外で最初にやり出したのもこの曲。とにかくスケールがデカく硬派なイメージがあって、それをそのまま形になんとかできてよかった。俺の刻みから始まって龍の歌が乗り、Bメロでバンドイン。Hue'sではやってこなかったパターンだが往年のロックバンドたちは結構やってきている王道なものだと思う。一番最初にライブでやったのは2019年6月14日のnano。残っているボイスメモを聴いてもどんな空気だったか一切思い出せないけど、1番サビ終わりまでやったところで全員間違えすぎて最初からやり直すという小っ恥ずかしい事件が起きてた。それくらい全員飲み込むのが難しい曲だった。これは難儀するぞーと思っていた矢先に同年7月14日に名村造船所跡地であったPangeaのイベント 新世界でやったumi e umi eがかなり気持ち良くてそこからよくやるように。あの瓦礫に囲まれた壁の無い、空間と空間に境目がないのが素晴らしかった。ああいうとこでまた響かせたい。安東を挟まなかったら今みたいな真っ直ぐな曲にならなかったと思う。彼の功績は誰もが想像しているより遥かに大きい。

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熱は籠り冷房もないし、音は回りまくる最高の場所。のりちゃんの写真も良い。また撮ってくれ。

 

9. Poolside(胸きゅんソング)

キャンプの賜物。 初めてライブでやったのは2021年6月12日のFireloopかな。スーパー作曲ゾーンに全員入ってたのでそこまで悩まなかった。というか悩んでる暇もないくらい納期が近かった...。あと根來真嗣と初めてゼロから作った記念すべき一曲。サビのリズムパターンは彼じゃなければ出なかったことでしょう。最初の最初はもう恥ずかしくなるくらいポップな出来上がりで大丈夫か?って感じでしたがなんとかHue'sらしくアンニュイで奥ゆかしい空気出せました。ちなみに、アルバムの最後を飾る可能性があった。イメージではサマーウォーズのエンディングとかで流れてても違和感がなく(サマーウォーズ見たことないけど)、それくらいフレッシュで顔を赤くしちゃうような。やり出した時は跳ねを掴むのが難しかったけどHue's得意なミドルでジワッと滲む感じか!と認識できてからはもうスルスルと。

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Poolsideを作っていた時に関する写真ない、と思いきやあった。2021年6月8日。FATE BOXカズの実家に行くという謎イベントが発生して深夜車を走らせて送られてきた住所に向かった。それはそれはもう尾崎が比にならないくらいの田舎であからさまに空気が綺麗で聴こえてくるのはせせらぎと鈴虫の音。彼の育った小さな小さな村を30分ほど歩いて紹介してくれた。カズがカズである意味がすごく見えてきたし何故か俺の脳もかなり開いた。それ、かなりPoolsideに反映させれたしそれ以外の曲の空気にもなってる。自然の音が1番のBGMだということすっかり忘れてたんよな。カズまじでさんきゅー。で、写真の黒猫は彼の実家にいたやつ。

 

10. Hallelujah(祈り、ステンドグラス)

今の形になるまで1番時間がかかったし本当に苦しんだ曲。残っている記録では最初に合わせたのが2019年3月13日。ビートが跳ねてる。謎すぎ。当初はアウトロのアルペジオがイントロにあったし、キーはCだった(今作はA)。しかももっとリバーブが深くてTHE NOVEMBERS(paraphilia、Misstopia期)のやるシューゲイザーに近い形だったはず。2年かかっても完全に着地できてなかったのであえて今作に入れると決めた。そうすればやるしかなくなるので。とはいえ色々試してみるがしっくりこない。手始めに、キーがCだとあまりに高すぎて(Youthのサビより高かった)歌えないのでAまで下げてみた。歌えはするけどイメージしていた大聖堂で響いてるような讃美歌にはならない。安東とも試行錯誤しながら、あれこれやってみるものの大きく違うわけではないがこれだ!とならず。そこで俺が引っ張ってきたのはLed Zeppelinが天国への階段とかThe Rain Songでやってるような、ギターと歌だけでしばらくいってみる手法。コードをしっかりなぞりつつ、わかりやすいローコードにならぬよう組み替えてやってみた。それが想像以上にハマった。そうか、讃美歌っていうのはベースとドラムという概念なかったな。伴奏と歌だけあれば十分だった。3年ほどの時間をかけてようやく着地。レコーディング時にはさらに大聖堂っぽさを出すためにコーラスを5つぐらい重ねたけどそれすら要らなくなった。バンドという形で讃美を表現したらこうなりました。今こんなことやってるやつ誰もいないことでしょう。素朴で最小限の祈り。

あなたの思う大聖堂を思い描いてください

 

11. ALMA(隕石衝突、ビックバン)

アルバムの最後を飾るALMA。安東と共に作った空、雨に次ぐ3曲目。最初の記録は2020年8月18日とある。イントロには龍の複雑なアルペジオがあったけど今は漢のローコードD1発となりました。あとこれもHallelujahに続いて跳ねてるわ。どうして作曲初期段階は跳ねがちなのか。コード進行や展開はHue'sの名曲となるものから引っ張ってきて「これは名曲にするぞ!」と作ってる段階から龍が言い切ってた。とはいえ俺はギターというものを見失いまくっていたので両手が動かずにいた。e-bowを使ってみたりBig skyに頼ってみたり、色んな手を使ってみるも進まない。そこに突破口となったのはDeath Cab For Cuite。何故そこに行き着けたかはわからないが、Narrow Stairsの1曲目であるBixby Canyon Bridgeな要素をふんだんに取り入れました。しばらくの間それでかなり良い線まで持っていけたのですが120%にはならなかった。なんとかそこまでいけたのはフジロックで見たenvyがあったから。俺個人としてはそれがあまりにも大きすぎる。龍本人も意識していたし色んな人にバレていたバンプのとある1曲を奇跡的に俺が知らないままいれてUSインディーとポストハードコアを融合させたら今の形になれました。毎ライブやるくらいお気に入りです。

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