原始神母(原子心母)

2週間ぶりのスタジオ、本来はANIMAでライブの予定だったが延期。急遽決まったナノボロに向けてセトリを決め、何度か通しで練習してあっという間に5時間終了。単純にメンバーと音を出すということが楽しくてしょうがなかった。しばらく感じることのできなかった心地よい疲労感と飲みすぎたコーヒーによる気持ち悪さ。

終わってからダラダラと話していたら仕事終わりのthe seadaysのドラムナラサキケイくんが一服しに寄ってくれた。久々に人と話すことが楽しいのはもちろんのこと、ケイくんまでやってきて、彼は話が常々面白くて、おかげであっという間に今までの世界に戻ってこれたような気分になった。この辺りで俺はこの後の予定が少し億劫になってきて悩む。いつ以来か分からないくらいに1人でライブハウスに遊びに行く予定にしていた。ANIMAがキャンセルになった直後に。想像のできない客層、Hue'sでライブをしたことがない上に普段から行くこともほとんどないライブハウス、しっかりと踏み入れたことのないジャンル。次いつ見れるか分からんし良くなかったなってなる可能性はほぼ0%なのでギターを根來カーに預けて1人向かってみた。

知り合いすら恐らく誰1人いないであろうイベント、貧弱な楽天モバイルの電波はきっと入らない。あまりに心細すぎる。2012年の秋あたりにパンゲアであったピアノガールとuremaのツーマンの日のことを思い出した。あの頃はずっと1人で行ってたしWi-Fiや携帯会社の電波は今ほど普及してなくてパンゲアですら圏外だった俺のギャラクシー。Hue'sのライブに1人で来てくれるお客さんを心底凄いと思いながら狭い階段降りて地下の受付へ。なんとか、ようやく入れたライブハウス。1バンド目がちょうど終わったみたいでバーカウンター以外は閑散としていた。バーカウンターだけは盛り上がっていた。やはり圏外の楽天モバイル。やはり誰1人いない知り合い。この後車を取りに帰るつもりだったので酒に頼ることもできぬまま、コーラ片手に隅っこのソファにありつき煙草吸いながらiPhoneのデータ整理を15分ぐらいしていた。めちゃくちゃ長く感じる15分を過ごしてからそろそろ始まるかなとフロアへ。ずっと流れてるブラックサバス。このライブハウスもフロアは禁煙になってる...とか超ロン毛のベルボトムか超短髪のおじさんしかおらんな...とか思ってたらようやく始まったライブ。この日の2バンド目になる彼らも少し気になっていたのですげえ前で見てみた。転換中は心細いけど待ち望んだライブが始まってくれるとどうにでもなりますな。

マーシャルとジャズコーラスを常に同時出力、ほぼほぼ踏みっぱなしのビッグマフ、アーミングや速弾きをしまくってもチューニングの狂いが一切ないスクワイヤーのストラト、ミドルの塊が音速で飛んでくるベース、時代がひっくり返ったかのようなひたむきなクラウト的ドラム。多分50分ステージで4曲くらいしかしてなかったはず。最後の曲は30分近くあった。ボーカルギターの方が歌っていたのは合計5分に満たなかったんじゃないかな。フジで見たOGRE YOU ASSHOLEを想起させながら俺はずっと爆笑。専属のカメラマンと思われる方は一眼を持つ反対の手には酒。ちょうど半分ずつぐらいの割合で両方をしていた。最前列にはなぜか中腰のベルボトムおじさん。マジで情報量多すぎ。音はデカすぎるし1曲が長すぎる。展開はプログレッシブだがリフやギターとベースがユニゾンになる部分は非常に泥臭くてクール。喰らい続けるとしんどくなるローの成分が一切無かったのは本当にすごい。ローはもはやバンドの誰にも必要ない?そんな感じで割とあっという間に終了。この時点で時刻は21時半。車を取りに帰るのを諦めバーカウンターでハイネケンを頂き煙草吸いながら歯茎の感覚がおかしいことに気づいた。良質な爆音を浴びた時って顎周りなんか変になりません?電波入らんし心細かったけど、1人で来て好きに楽しむのめっちゃいいな〜とか思っちゃいながら腰据えて飲む酒も美味しかった。過ごし方を心得てから?思い出してから?はもうトリのバンドが始まるまでは一瞬で。

待ちに待った目当てのバンド。今月始動したところで音源はなくバンドとしての情報はTwitterに上がっている30秒ほどのライブ映像のみ。恐らくその界隈の強者であろう人たちで結成されているので流石に気になっていた。転換で運び出されてくるギタリストの足元には見たことのないシステムで組まれたボード。秒速で飲み切ってしまったハイネケン。恐らくフロアのほとんどの人が知らないモノが繰り広げられる。ブラックサバスのParanoidがフェードアウトしついに流れるOpening SEは第9地区の冒頭で流れるような古代、的な...。照明は緑。ついに始まってしまった。

サイケデリックプログレッシブが密接な関係であることがよくわかった。なんか聴き馴染みのあるパターンやなと思ったら実はブルースの王道な進行ではあったり。ギタリストはライブの序盤で1弦が切れた。しかしほとんど狂わないチューニング。ペグからぶらぶら伸びている切れた弦をシュッと外しライブは止まることなく進行する。足元に置かれていた緑のアーニーボールの意味とは。ボーカルは57マイクで、恐らくDeath By Audioのエフェクターをマイクスタンドに固定して巧みに操作しながら声じゃない音を発している。いや、声だからこそ出来るプレイではあった。まるでビートルズのモノラルレコードを爆音で鳴らしているかのようなミドルの凝縮っぷりのジャズベース。ライブの中盤、長ーいアンビな空間が繰り広げられた時にはまた彼の足元にもあるDeath by Audio(しかも2個)が踏まれていた。ちなみにギタリストの足元にもDeath by Audioはあった。ほぼほぼおじいちゃんであろうドラマー。虚ろな顔をしながらもドッシリさとライドの気持ちいい使い方がずっと魅力的。なんと最後の曲ではギターの2弦も切れる。6本中2本も弦が切れたギター。しかし曲を誰も知らない。プレイ自体もなんの問題もないように見えてそのまま終わってしまった。事前に足元に用意されていたアーニーボールの緑の意味とは......。アンコールはなく壮絶すぎた50分。長らく気になっていたジャンル、世界、空気をゼロ距離で浴びることができた。最初の方はフロアも乗りこなし方がわからなくて歓声や拍手はなかったが最後の最後にはもう大盛り上がり。あんなもの見たらそうなりますわ。

Hue'sを始めてから早6年ほど?ライブハウスに完全なる純粋な客としていくことがほとんどなくなってしまっていたが色んなことを思い出した。来てくれる方々、本当に凄い。物販が欲しくても中々声かけられなかったり、自分以外は皆友達同士で来ていて転換中の居場所が分からなかったり、ライブハウスって難しいな。でもいざライブが始まってしまえばあり得なくらい楽しい。そのギャップも素晴らしいかもしれない。でももっと過ごしやすくてもいいかな〜とか色んなこと思っちゃったな。とにかく、凄まじい情報量だったのでとりあえずここに記しておく。